山田(仮名)さんは乳児の頃に母親を亡くし、父の後妻Aを本当の母親のように慕い毎日を暮らしていました。山田さんが50歳を過ぎたころ、父が他界し、その後まもなくAも他界したのです。
実は、山田さんとAさんは、養子縁組がされておらず、戸籍上の親子関係になっていなかったのです。つまり、山田さんはAさんの相続人ではありません。
そこで、困ったことは、父の相続をしないままAさんが亡くなったため、AさんはAさんの夫(山田さんの父)の相続人の立場のまま亡くなりましたので、Aさんの実の相続人が、夫の相続分を引き継ぐ形になってしまいます。Aさんには子がなく、Aさんの相続人はAさんの兄弟6人です。
山田さんは父の土地の名義変更をするために、Aさんの兄弟を含めて遺産分割協議をすることとなってしまいました。約40年間本当の母同然に接していたAさんと戸籍上も親子でないと知ったショックに加え、相続でも大変な苦労をすることになってしまいました。
もし、養子縁組をしなかった理由があるのであれば、父が遺言書を遺すなど、山田さんに負担をかけない方法はあったと思います。自分の死によって相続人が困った状況にならないように生前に、確実な対策を取ることが大切ですね。
行政書士 青木克博